Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞



【日本フィヒテ協会研究奨励賞(第一部門)】

パトリック・グリェーネベルク氏

――受賞対象論文――
  • 「抵抗の像における行為--行為の投影における世界の思量」
    (『フィヒテ研究』 第24号、2016年)
――受賞理由――
 本論文は、フィヒテの『意識の事実』を検討することで、「知覚」と「行為」の相互限定を「思量」において見定め、そこに見いだされた思量の個体性と歴史性を踏まえて「物質的基準」の必要性を見いだし、人工知能におけるアルゴリズム的知性の生成の問題へと議論を展開させる。フィヒテの諸説を超えて、フィヒテ 哲学と認知科学やロボット工学を関連づけようとする大変意欲的な論文であり、フィヒテ研究の現代的可能性を示唆している点は高く評価される、しかし他方本論文は、その課題に成功しているとは必ずしもいえない。その主な理由は、論旨の分かりにくさと論証の不十分さにある。しかし限られた紙幅のなかで、方法的、言語的なハンディを克服しながらの挑戦的成果であるということは認められる。氏の独創的なフィヒテ研究のさらなる進展と説得力のある表現能力の研鑽を期待して、研究奨励賞を受賞することにする。