Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞



【フィヒテ賞(第二部門)】

田端信廣氏

――受賞対象著作――
  • 『ラインホルト哲学研究序説』(萌書房、2015年)
――受賞理由――
 本書は、ラインホルトの思想的発展をカント以後の哲学的発酵のなかで辿ろうとする、本邦初のラインホルト研究である。その叙述は、ドイツ観念論哲学の批判的展開を、ラインホルトを「触媒」として、従来にないドイツ観念論の論争史として立体的にみごとに描きだすことに成功しているだけでなく、同時代の論争史のコンテクストのなかでフィヒテ知識学生成の過程を明らかにする優れたフィヒテ研究ともなっている。
 内容が優れているだけでなく、文章も明快であり、論の展開にも隙がない、難を云えば、叙述が必要以上に膨らんでいるところがあるが、それはこれまであまり知られなかったテキストの内容を紹介するためとも思われる。また考察の対象範囲が1803年ころまでで閉じられ、その後の二十年間の思想展開について論及が及んでいない点を惜しむ評も複数あったが、あるいは書名に『序説』を付した理由は、そこにあるのかもしれない、続編が待たれるところである、ともあれ選考委員会は本書がフィヒテを含む初期ドイツ観念論に対する視野を大きく広げる画期的な研究成果であることを高く評価し、まことにフィヒテ賞にふさわしい作品であるとの結論を得た。