Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞


フィヒテ協会賞】

第24回大会当当日に、2008年度のフィヒテ協会賞(研究奨励賞・若手対象)授賞式が行われ、受賞者である鈴木伸国氏に、賞状、賞金、副賞が授与された。

――受賞対象論文――
  • 「啓示批判書における『信』の構造と位相」(『上智哲学誌』第19号、2007年き月)
    −−なお「フィヒテにおける『信』の包括的要約の試み(1809年)」(『上智哲学誌』第20号、2008年3月)を参考論文とする。
――受賞理由――
 2008年度より、前年の業績を対象として、若手研究者にも「研究奨励賞」を授与することになった。この新設の賞の受賞者として選ばれた鈴木氏は、京都大学文学部卒業後、上智大学哲学科に編入され、卒業後上智大学大学院に進学された。また上智大学神学部でも学ばれた。
 このような歩みを背景に、フィヒテにおける「信」の間題を一貫して研究してこられた氏の受賞対象論文、および受賞対象論文の問題を発展させた参考論文は、その成果を結実させたものである。知識学の核心部分は、「神論(Gotteslehre)」にあると言える。したがって氏のフィヒテ研究の視角は、フィヒテの核心に迫る道筋を辿り得る方途を示唆する注目すべきものと評価できる。
 「啓示批判書における『信』の構造と位相」で氏は、『あらゆる啓示の批判の試み』の検討を通して、次のような見解を提示している。すなわち、カントの実践的自由を宗教論の問題位相で語ることで、「信」を新しい問題地平の展開を担うものとした。
 かかる「信」の役割を1809年の哲学的断片に注目して読み解いたものが、「フィヒテにおける『信』の包括的要約の試み(1809年)」であったと理解してよいであろう。一言で言えば「反省からの踏み超えなしに反省の妥当性を『絶対者』の構成に対して相対化する方法」として、思惟と現象をつなぐ「信」が機能している、という考察がなされている。
 以上指摘してきたように、問題の着目点とその理解度は、将来のフィヒテ研究の進展に寄与するものと認められる。当選考委員会が賞の授与を以上の理由により決定した次第である。
2008年11月
日本フィヒテ協会賞選考委員会