Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会


日本フィヒテ協会賞


第1回日本フィヒテ協会賞】
日本フィヒテ協会第11回大会当日、日本フィヒテ協会第1回研究奨励賞の授賞式が行われ、受賞者の入江幸男氏(大阪大学)に賞状と副賞が授与された。授賞対象業績と授賞理由は次の通りです。
――受賞対象業績――
A 研究論文
  • 「初期フィヒテの他者論」(『哲学論叢』大阪大学文学部哲学哲学史第二講座編、第14号)、1984年
  • 「フィヒテとへーゲルの他者論」(『哲学論叢』、第15号)、1985年
  • 「『新しい方法による知識学』の他者論」(『哲学論叢』、第16号)、1985年
  • 「フィヒテにおける自己意識の成立とダブルバインド」(『哲学論叢』、第19号)、1988年
  • 「フィヒテの国家契約説における二つのアポリア」(『講座ドイツ観念論』第3巻、弘文堂)1990年
  • 「フィヒテにおける弁証法と決断」(『ドイツ観念論のディアレクティク』、法律文化社)、1990年
  • Dialekthik und Entschluß bei Fichte. In : Fichte-Studien Bd. 5, 1993
  • 「フィヒテにおける『世界』概念の変化」(『カンティアーナ』大阪大学文学部哲学哲学史第二講座編、第14号)、1990年
  • 「へーゲル哲学とシステム論的家族療法についての一考察」(『叢書ドイツ観念論との対話』第4巻、ミネルヴァ書房)、1993年
 口頭発表
  • 「『新しい方法による知識学』の他者論」(日本フィヒテ協会創立大会、研究発表)、1985年
  • 「自我の複数性と理性界―決断主義の克服のために」(日本フィヒテ協会第5回大会、シンポジウム)、1989年
C 書 評
  • ‘Rezension“Fichte-Studien(Fichte-Kenkyu), Band 1”’(Fichte-Studien, Bd. 7に掲載)
――受賞理由――
 本協会会員入江幸男氏は、長年にわたるそのフィヒテ研究において上記諸論文・諸発表に見られるような顕著な業績を挙げられました。「如何にして人間は自分と等しい理性的存在者を、自分の外に想定し承認するに至るのか」というフィヒテの他者論ならびに承認論の独創性と重要性とを、促し(Aufforderung)という観点から、またカントやへ一ゲルとの関連において幅広く、さらに二重拘束性を説くダブルバインド理論や円環的因果性を重視するシステム論的家族療法論等、現代の諸思想からの視点も積極的に取り入れて、綿密精緻な考察と明快な論旨とをもって解明しました。そして本協会の創立大会における研究発表や第5回大会におけるシンポジウムの提題等を通じて学会の活動に寄与し、さらにはそのドイツ語論文Dialektik und Entschuluß bei Fichteや本協会機関誌『フィヒテ研究』についてのドイツ語書評Rezension über Fichte-Kenkyu等により、フィヒテ研究における国際交流にも貢献されました。よってここに当選考委員会は入江氏の優れた業績に対し、第一回研究奨励賞を授与する事に決定いたしました。
 1995年11月11日
 日本フィヒテ協会賞選考委員会