Japanische Fichte-Gesellschaft
日本フィヒテ協会







新会長就任の挨拶
 
  
 
日本フィヒテ協会は1985年、隈元忠敬先生、大峯顕先生、長澤邦彦先生を中心に設立されました。設立以来、関係の方々の熱意に支えられて、本協会は少人数ながらも、その利点を生かした内実のある発展を遂げてきました。30年を超える長い歴史を持つこの学会の会長に、このたび思いがけず就任することになりましたので、一言ご挨拶申し上げます。

 本協会の特徴は、何よりも、会員の間にフィヒテのテクストという共通の基礎があるという点にあります。当初、哲学者個人の名前を冠した小さな学会をつくっても、そこではテクストの細かい穿鑿ばかりがおこなわれて、実りある哲学的議論はできないのではないかという危惧の声もありましたが、本協会に関しては幸いにもそのような危惧は現実のものとはならず、むしろ、テクストを正確に読むという課題が、流行や思い付き、または思い込みにもとづく乱暴な議論を抑制し、哲学的議論の場を確保するという役割を果たしてきたように思われます。この点に関しては、真理探究の大切さを、言葉のみならず、その行動において示してこられた諸先達に心より敬意を表したいと思います。この伝統を受け継いで行くべく、本協会では現在、『全知識学の基礎』、『新しい方法による知識学』、『1804年の知識学』、『意識の事実』等をテクストして、有志で読書会を開いています。関心をおもちの方は奮って美濃部(minobe@meiji.ac.jp)までご連絡ください。

 また、本協会の大きな特徴として、国際フィヒテ協会(International J.G. Fichte-Gesellschaft) との連携があります。国際フィヒテ協会では三年に一度の大会(次回大会は2018年秋にフランスのエクス・アン・プロヴァンスで開催される予定)のほか、さまざまな催しが行われています。HP(2016年夏からの新アドレス:www.fichte-gesellschaft.org)等をご覧になって興味をもたれた場合、ご連絡くだされば喜んで仲介させていただきます。

 フィヒテの哲学は大変魅力的ですが、また難解でもあります。それを正しく理解するためには、一人で落ち着いてテクストに取組むことに加えて、自分とは別の観点からフィヒテに接近している他の研究者と意見交換をおこなうということが重要であるように思われます。また、それは楽しくもあります。日本フィヒテ協会は、そのような意見交換の場であってほしいと私は願っています。いろいろなめぐり合わせで会長をお引き受けすることになりました以上、微力を尽くす所存ではありますが、もとより浅学菲才の身、私一人ではこの大役を務め上げることはできません。皆様のご指導とお力添えを切にお願い申し上げる次第です。

2016年7月21日
美濃部 仁








前会長就任時の挨拶
 
  日本フィヒテ協会が発足したのは1985年、フィヒテの生誕の日でもある5月19日であった。隈元忠敬先生が初代会長、続いて大峯顕先生、長澤邦彦先生、入江幸男先生と会長が引き継がれてきた。その間、本書『フィヒテ研究』も1993年より発刊され、今年度18号にまで至っている。今年2010年は、思えば発足25年目にあたるが、これから私が会長を務めさせていただくことになった。
 "Die Philosophie ist ein Wissen."というフィヒテのことばが、フィヒテ哲学のアルファでありオメガである。近世において哲学の主要問題が認識論となったことを受けて、フィヒテはむしろ哲学の本来の問題を徹底して深めたと言える。つまり「知る」という事柄の成立構造に「人間存在」の根底がかかわっており、しかもその問題を、「自己」と言われるもののあり方の間題と一つに、一貫してしかも多様なキーワードを次々開拓しつつ探求が試みられる。ここに哲学としての根源性と、それゆえに時代を超えてかえって見出されるべき現代性がある。
 哲学を問い、現代を問い、自己を問い、あわせてつねに日本フィヒテ協会を問う、という歩みを、皆様のお力をお借りして怠ることなくすすめていきたいと願らている。
 哲学の歩みは、問い自身を問いただすところからつねに始まる。これからのフィヒテ協会の歩みに向けての間いただしは、フィヒテ没後二百年と日本フィヒテ協会発足三十年を焦点にして進めたいと考えている。そのさい国際フィヒテ協会との連携も、視野に入れておきたい。
 フィヒテとのかかわりから、広く、深く、各自の研究がすすみ、そのことにおいて相互め人間交流も厚みを加えていくことが、私の願いである。このことも皆様のご理解なくば果たせない、重ねてご協力をお願いする次第である。


2010年8月27日
岡田勝明







元会長就任時の挨拶
 
 日本フィヒテ協会は、隈元忠敬先生、大峯顕先生、長澤邦彦先生の熱意とご尽力によって、ドイツにおける国際フィヒテ協会の発足(1987年)に先だって、1985年5月19日(フィヒテ生誕日)に世界で最初のフィヒテ研究者の協会として発足しました。初代会長を隈元忠敬先生が、第二代会長を大峯顕先生が、第三代会長を長澤邦彦先生が務めてこられました。この三先生のお仕事によって、日本における本格的なフィヒテ研究が始まり、その基礎が築かれたといえるでしょう。その三先生が協同して、日本フィヒテ協会を立ち上げることによってその基礎づくりは完了したと言ってよいかもしれません。我々はこれらの研究と学会組織という基礎の上にたって、また1962年から始まったドイツでの新しいフィヒテ全集に刺激を受けつつ、研究をしてきた世代だといってよいでしょう。今やこれらの基礎の上にたって、国際的なフィヒテ研究に貢献してゆかなければならないという時期にあります。この貢献は、長澤前会長が築いてこられた国際フィヒテ協会との強い連携によって、日本フィヒテ協会の設立当初からすでに始まっているのですが、学問の世界でもグローバライゼーションが急速に進む中で、今後ますます重要になってくる課題だと思われます。
 日本についても、世界についても言えることですが、フィヒテ研究は、カントやヘーゲルの研究に比べると、研究者の層が薄いために、知識学、法論、道徳論、宗教論など、どの分野をとってもまだ十分にその全体像が紹介されているとはいえませんし、その理論的なアクチュアリティについても発掘されているない論点がまだ多くあると思われます。協会の設立趣意書に大峯先生が「研究の新しい軌道は敷かれたものの、その詳細で具体的な論究はなお将来の課題として残されています」と書かれてから19年が経ち、後期知識学の研究などかなり進んだ分野もありますが、基本的にはこの言葉が今もまだ当てはまります。フィヒテ研究は古い学問のように見えて、実はまだ成熟にほど遠い若い学問だと言うことができます。おそらくはその証だと思われるのですが、国際フィヒテ協会にも参加者が毎回大幅に増えています。
 しかし、フィヒテ研究の状況は楽観的なものではありません。近年、大学での研究にも実用性が強く求められる風潮の中で、哲学研究をめぐる情況が厳しくなっている、という現状があります。その中で、将来を背負う若いフィヒテ研究者を育てることも一層重要な課題になっています。このように将来に向けての楽しみも心配もありますが、上に述べたような課題のために、また協会の発展のために、非力ながら力を尽くしたいと思いますがので、協力とご支援をお願い申しあげます。


第20回大会において挨拶をされる入江会長
2004年8月8日
日本フィヒテ協会会長 入江幸男